数珠つなぎ_チューブラー・ベルズ

音楽の世界には30年近くひとつのフレーズを糸にさまざまな珠の曲を繋いでいるミュージシャンがいます。それがいつか輪となり後世に残る逸品の数珠となるのでしょうか。 …

Mike Oldfield Story (BBC Documentary)


エクソシスト

たとえば、『2001年宇宙の旅』には「ツァラトゥストラはかく語りき」「美しく青きドナウ」などのクラッシック音楽が用いられて、SF映画 = 電子音楽という図式を覆し、ハイテクとエレガンスの融合に見事に成功しています。

同じようなことがオカルト映画のジャンルにも起きたのです。

The Exorcist(1974年)

マイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』(Tubular Bells)を知ったのは、1974年に日本で公開された映画『エクソシスト』でした。

現在ではイギリスの多国籍大企業であるヴァージン・グループ(Virgin Group)のスタートとなったヴァージン・レコードの記念すべき第1回発売新譜『チューブラー・ベルズ』です。このアルバムは現在までにイギリス国内で260万枚を売り上げており、全英歴代トップ30にランクインするほどの大ヒットとなっています。

悪魔払いをテーマとしたオカルト映画のテーマ曲としてはメロディがあまりにも美しく、不思議な雰囲気を漂わしていました。その印象があまりにも強いため、ある時期までは『チューブラー・ベルズ』のフレーズを聴くと『エクソシスト』を思い浮かべたものですが、今は浮かんできません。時が流れ、自分の中で『エクソシスト』の印象のほうが早く枯れてしまったからでしょうか。

ところで、

オールドフィールドは『エクソシスト』のテーマ曲として使用された『チューブラー・ベルズ』には一切の関わりを持っていないとのこと。

 

1973年12月公開のアメリカ映画『エクソシスト』のテーマ曲として「パート1」の冒頭が使用された。ただし、版権の問題があり、オールドフィールドが演奏しているアルバムのバージョンではなく、別途、録音された別アレンジのものであり、オールドフィールドはその録音には一切の関わりを持っていない。

オールドフィールド自身は、『エクソシスト』のおかげで『チューブラー・ベルズ』がアメリカで大ヒットしたことには感謝しているが、自分の曲を編集されたことに対しては不快に思っていたという。

イギリスでは、オールドフィールド自身の意向を反映したシングル「Mike Oldfield’s Single (Theme from Tubular Bells)」が1974年6月にリリースされた。これは、「パート2」からの抜粋に、オールドフィールドのアコースティック・ギターとリンゼイ・クーパーのオーボエをオーバー・ダビングしたもので、オールドフィールドによれば、これらのアイディアを発案したのはジョージ・マーティンだったという。そして、同シングルは全英シングルチャートで最高31位に達した。

Wikipedia

 


コンセプトアルバム全盛時代

『チューブラー・ベルズ』はパート1、2 で 48分にもなる大作なのですが、当時はそんなコンセプトアルバムも多く、平気で聴いていました。

現在はといえば、そのような長い曲をリリースできる力量を持ったミュージシャンも、またそれを受け止める聴衆も少なくなり、コマーシャリズム満載の曲だらけの世の中になってしまいました。

しかし、NewageMusic のように人の心に響く美しい音空間の紡ぎだすにはそれなりの「時の流れ」が必要と考えてがんばっているミュージシャン達もいます。

 


デアボリカのテーマ

そしてもうひとつ、似て非なるオカルト映画に『デアボリカ』(Chi Sei?)があります。こちらはオヴィディオ・G・アソニティス監督のマカロニ・ホラー映画。内容は「ローズマリーの赤ちゃん」+「エクソシスト」といったところでやっつけB級ホラー映画といったところでしょうか。

FRANCO MICALIZZI – CHI SEI(1974年)

さすがにあまりヒットしなかったようですが、こちらのテーマ曲もお気に入りなのです。

 

暑い静かな夏の午後、この曲は実にクールでしっくりとした雰囲気を醸し出すのです。

 


ジャッキー・ブラウン

このデアボリカのテーマ、1997年のクエンティン・タランティーノ監督の『ジャッキー・ブラウン』(Jackie Brown)を先取りした雰囲気をもっていたと考えています。意外にもタランティーノ監督もお気に入りの曲だったりしたかもしれません。

Jackie Brown(1997年)

 


チューブラーベルズ

ところで「チューブラーベルズ」とはいったい何なのでしょうか。

Tubular Bells III

ジャケットを見てみると「トライアングル」という楽器のような気がするのですが、何かおかしいのです。3つの角のうちの1つが交差して、チューブの両端が開放されている。この楽器は一体どのような音色がするのでしょうか。


チャイム(チューブラーベルズ)

日本人にとって「チューブラーベルズ」という楽器は「NHKのど自慢の鐘」といえば分かりやすいですね。

 

長い金属チューブ(筒)を縦に半音階差で並べたもの。黒鍵に相当する音程のチューブは後列の上に突き出して配置してある。楽器の高さは1.8メートル程。音程によってチューブの長さは異なる。チューブの上端は閉じてあり、下端は開放されている。

楽器解体全書

YAMAHA CHIMES CH-500
輝きのある音色と優雅な余韻。オーケストレーションに華麗な彩りをそえる本格派ヤマハチャイム。 音域11/2オクターブ(C52~G71 20音)基準ピッチ A442Hz(23℃)W86cm×H179.8cm×D67.8cm 84kg 販売価格¥598,000

 

トライアングル

トライアングルの形状は三角形に曲げられた金属(一般には鋼鉄)の棒である。通常、3つの角のうちの1つが、閉じられず、切れた状態である。ゆえに、トライアングルは2ヶ所の曲部を持った1本の棒であるといえる。

 


フレーズの糸と珠

マイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』の有名なフレーズはその後30年近くも愛されています。

マイク・オールドフィールドのディスコグラフィ

1980年代はレコード会社のイニシアティヴが強く、「ニューウェーヴ」ブームもあってプログレッシブ系アーティスト受難の時代でした。マイク・オールドフィールドも売れ筋シングル制作を余儀なくされ、大変な受難期を過ごしています。

1983年にこんな曲もリリース。

Moonlight Shadows (Official Videoclip) – Mike Oldfield & Maggie Reilly

ちなみに1982年のヒット曲はこの曲。

do you really want to hurt me – Culture club

久々に聴いてみるとほんとに懐かしいのですが、確かにこんなのが流行っていた時代ですから仕方がなかったことかもしれません。

ところが、

1990年、同じヴァージン・レコードからデビューしたのがこのブログでも何度も取り上げている「エニグマ」です。デビュー曲「サッドネス・パート1」は世界的ヒットとなり、民族音楽やグレゴリオ聖歌なとダンスビートを融合したサウンドで、世界の音楽の潮流の変化を示しました。

サラとアメリア_SUDAREの部屋

90年代に入るとその呪縛から逃れて、再び自由を取り戻し、『チューブラー・ベルズ』の続編制作を再開、1992年に発表された『チューブラー・ベルズ II』が全英1位を獲得しました。その後も『チューブラー・ベルズ』の進化は続き『Tubular Bells 2003』に至っています。30年近く同じショートフレーズを糸として時代の流れの珠を紡いで。それはまるで数珠つなぎのよう。

1973 Tubular Bells
1992 Tubular Bells II 1994
1998 Tubular Bells III 1999
2003 Tubular Bells 2003

そして

2008 Music Of The Spheres

「SUDARE」の部屋としてはこの『TUBULAR BELLS III』がお勧めです。

Mike Oldfield-Tubular Bells III Live London

 


本日の一曲

最後に最近お気に入りのマイク・オールドフィールドの曲。

Mike Oldfield – Shabda – Music Of The Spheres (con letra)