今年は、不滅の名盤ピンク・フロイド『狂気』リリース 50周年!

1973年2月27日、ピンク・フロイド8作目アルバム『狂気』の初披露となる記者発表がロンドンのプラネタリウムで開催されました。


そして50年の時を経た今年、プラネタリウム・ショー「The Dark Side Of The Moon」として蘇りました。

Pink Floyd – The Dark Side of the Moon – Official Planetarium Show

12万年ぶりの暑さ

コペルニクス気候変動サービスなどは今年7月の気温について、樹木の年輪やサンゴ礁、深海の堆積(たいせき)物などから抽出した気候データをもとに推定すると、ほぼ間違いなく、地球がこれほどの暑さになるのは12万年ぶりだと指摘しています。

2023年7月29日21時の実況天気図_気象予報士Kasayanのお天気放談

ドライヤーとスチームクリーナーに囲まれた日本?(230730)

上空の太平洋高気圧・・・それも「コア」や「コアのコア」にまで覆われ、夜間も高温熱風が吹き降りる状態。

この状態なら高気圧にブロックされて台風は本土に近寄れないけど、東日本はまるで真上からヘアドライヤーの吹き出し口を向けられたような状態。

また、西日本は上空の太平洋高気圧の縁にあたるけど・・・縁は縁でもコアの縁だから、スチームクリーナー喉元にを突き付けられたようなもの?

ドライヤーもスチームクリーナーもジャパネットの通販だけにしてくださいな。

と復活した「お天気放談」で気象予報士Kasayanも呟いています。

偏西風の蛇行

「エルニーニョ現象で熱帯の海水温が上昇し、偏西風が蛇行して異常気象につながる」という因果関係は経験的には知られてきました。しかし、海水温の上昇が一体どうしたら偏西風の蛇行につながるのか、現時点ではわかっていないことが多いそうです。

とはいえ、最近の天気予報(有料のNHKも含め)は天気図さえまともに表示しないことも多く、単に気象予報士が大きな玉を動かしながら、安易な気象解説で晴れとか雨の予報をしているだけ。

せめて、北半球上空の気圧配置に偏西風の蛇行のアニメを加えて、ヨーロッパからアジアを経て日本に到る気象の流れを伝えて、異常気象が来そうなのか視聴者が判断できるような情報を流して欲しいものです。


酷暑のもと、盆踊り会準備

先日、地元の盆踊り会の手伝いをしたのですが、3日前の38℃に比べ、下がったとはいえ36℃の焼け付くような真夏の炎天下での準備作業はたいへんでした。

完成したやぐらと提灯

慣れない炎天下の作業に、目の前が白くまぶしく輝き足取りがふらついたので、熱中症かなと建物の陰に涼んで見上げた空に、

あの夏の日が。

それは1973年の夏。

大学に無事入学、リリースされたばかりのピンク・フロイドの『狂気』に熱狂し、ダイエー鳴子店のレコード店でアルバイトを始めた年。

その年の夏、ダイエー鳴子店の屋上の駐車場で盆踊り会が開かれました。ささやかながら打ち上げ花火も。

Photo by Juha Tuomi on Pexels.com

見上げた黒い夜空に花火が彩ると、毎日のように聴いていたアルバム『狂気』の一曲「The Great Gig In The Sky(虚空のスキャット)」のフレーズが浮かんできたのでした。


「The Great Gig In The Sky」

Bluces are the songs of despair, and gospel songs are the songs of hope. 

(ブルースは絶望の歌だけど、ゴスペルソングは希望の歌なのよ)

 – Mahalia Jackson(マへリア・ジャクソン)

この「The Great Gig In The Sky」というタイトル、直訳すれば「天空の素晴らしきセッション」となります。ちなみに天空の城ラピュタの英語タイトルは「Laputa Castle in the Sky」。

実際には、声を一つの楽器として表現するジャズ手法であるスキャットを用いた、ピンク・フロイドのゴスペル風ジャズ・セッションといった印象です。

日本語タイトルは「虚空のスキャット」。

Wikipedia

虚空とは「何もない空間、大空。 何も妨げるものがなく、すべてのものの存在する場所。」というやや概念的な言葉なのですが、日本人にはなにやら惹かれるニュアンスがあり、この日本語タイトルは曲に対する印象に大きく影響しているようです。

The great gig in the sky – clare torry(1973年)

ベルサイユ宮殿

オリジナルレコードの女性ボーカルのクレア・トリー(Clare Torry)も良かったのですが、その後1988年に公開された『光~PERFECT LIVE!』でのベルサイユ宮殿前のアルム広場で収録されたレイチェル・フューリー(Rachel Fury)バージョンの「虚空のスキャット」がお気に入りでした。

Pink Floyd – The Great Gig In The Sky | Tour Footage | Versailles, France – June 21th & 22nd, 1988

あれから50年もの月日が流れ、これから先、どれほどの時間が残ってるだろう。休める場所はどこにあるやら。


「古人寸陰を惜しむ」雑詩12首 其5 陶淵明

憶我少壯時 憶ふ 我少壯の時
無樂自欣豫 樂しみ無くも自づから欣豫(たの)しめり
猛志逸四海 猛志 四海に逸せ
騫翼思遠飛 翼を騫げて遠く飛ばんと思へり
荏苒歳月頽 荏苒として歳月頽れ
此心稍已去 此の心稍や已に去りぬ
値歡無復娯 歡に値ふも復た娯しむ無く
毎毎多憂慮 毎毎 憂慮多し
氣力漸衰損 氣力 漸やく衰損し
轉覺日不如 轉た覺ゆ 日びに如かざるを
壑舟無須臾 壑舟 須臾無く
引我不得住 我を引きて住(とど)まるを得ざらしむ
前塗當幾許 前塗 當に幾許ぞ
未知止泊處 未だ止泊する處を知らず
古人惜寸陰 古人は寸陰を惜しめり
念此使人懼 此を念へば人をして懼れしむ

考えてみれば私は若い頃、楽しみ事が無くても自ら楽しんでいた。
盛んなる志を天下に馳せ、翼を揚げて遠く飛ぼうと夢想していた。
歳月はしだいに流れ去り、こうした心はほとんど消え去ってしまった。
楽しみ事にあっても楽しみなく、いつも思い悩みが多い。
気力はしだいに衰え、つくづく思う。私は日毎に劣っていくと。
時の流れの速いことは少しも待ってくれない。私を引いて、とどまることを知らない。
これから先、どれほどの時間が残ってるだろう。休める場所はどこにあるのか。
昔の人はわずかな時間でも惜しんだ。これを思えば人は恐れざるをえない。

「壺齋閑話」より

Twelve Miscellaneous Poems: No.5 Tao Yuan-ming

I recall the days of my youth,
I lived contentedly without any particular enjoyment.
My passion extended to the four seas,
I aspired to soar far on my wings.
The years went by and then,
My will slowly faded away.
In mirthful sprees 1 found no pleasure,
Encumbered by a heavy heelrt day by day.
My strength of will declined,
Day by day 1 realized it was not the same.
Time shot like a boat through a narrow gorge,
pulling me unrelentingly toward decrepitude.
I do not know how my years are nUmbered,
Nor the harbor for my anchorage.
The ancients never slighted even a minute,
Thinking of this makes one tremble.

『陶淵明考』(其一)東と西,漢詩の英訳(3)


ということで、今年は、不滅の名盤ピンク・フロイド『狂気』リリース 50周年!なのでした。


たった 5年という年月に

今まで聴いた中で『The Great Gig In The Sky(虚空のスキャット)』のほかにスキャットの名曲がもうひとつありました。

それは、

『夜明けのスキャット』(1969年)

考えてみると中学生の頃、CBCラジオの深夜放送『夜のバラード』で「夜明けのスキャット」を耳にしてからたった5年後に、大学生になって「The Great Gig In The Sky(虚空のスキャット)」を聞いていたのでした。

成長期の過ぎゆく速さに今頃気がついて驚いています。

夜明けのスキャット- 由紀さおり(1969年)

ついでに同じ頃流行ったのが「I Love How You Love Me(忘れたいのに)」

モコ・ビーバー・オリーブ/わすれたいのに(1969年)

同じ年「夜明けのスキャット」の大ヒットに巻き込まれて少々影が薄かったのが、モコ・ビーバー・オリーブがひと月先行してリリースしていた「忘れたいのに」。

フィル・スペクターのプロデュースでヒットしたパリス・シスターズの「I Love How You Love Me(1961年)」のカバーとして、同じくCBCラジオの深夜放送『パンチ・パンチ・パンチ』から生まれた曲でした。

Claudine Longet – I Love How You Love Me(1967年)

この曲はクローディヌ・ロンジェが2年前の1967年にカバーしていてお気に入りの曲でした。(たぶん聞いていたのは1968年に日本で発売された Claudine Longet – Claudine Longet Vol. 2 だったかと)

中学生ながら幸せいっぱいのクローディヌの声にうっとり聞き惚れていましたので、モコ・ビーバー・オリーブの「忘れたいのに」の歌詞には何となく違和感を感じていたものです。


本日の一曲

2020年にリリースされた『光~PERFECT LIVE!』ニュー・4Kバージョンは、長年眠っていた100個以上ものフィルム缶に収められていたオリジナル35mmネガ・フィルムを丹念に修復し4Kに変換した映像と5.1サラウンド・サウンドで音質を向上させたものでした。

このうち「ザ・グレート・ギグ・イン・ザ・スカイ」は、

旧バージョンでは、当初白黒で上演され一部のカラーショットはベルサイユ宮殿アルム広場で撮影されたものでしたが、新しい編集にはベルサイユの映像はなく、全編フルカラーになっています。

Apple TV 経由の4K大画面で一段とクリアになった若かりし頃のレイチェル・フューリー(Rachel Fury)の姿に、技術の進歩を実感しながら

クーラーの効いた部屋でビールを片手に「やっぱり夏はピンク・フロイド」と呟いて見ている50年後の自分がここにいます。

Pink Floyd – “Delicate Sound of Thunder” New 4k Edition

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