元年初日「梅花の宴」_Erik Wøllo の曲にのせて

慌ただしかった「平成」改元とは違い、静かに迎えた「令和」初日。
とうとう3つの元号をまたいで生きることとなりました。
次はどんな世界が待っているのでしょうか。

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新元号の「令和」 は「万葉集」の「梅花の宴」をつづった序文から採用されました。

梅花謌卅二首并序

天平二年正月十三日、萃于帥老之宅、申宴會也。 于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。
加以、曙嶺移雲、松掛羅而傾盖、夕岫結霧、鳥封穀而迷林。
庭舞新蝶、空歸故鴈。於是盖天坐地、促膝飛觴。忘言一室之裏、開衿煙霞之外。淡然自放、快然自足。若非翰苑、何以濾情。詩紀落梅之篇。古今夫何異矣。宜賦園梅聊成短詠。

それは、730年 2月 4日に、大宰府の帥・大伴旅人(当時66歳)が邸宅で宴会を開いた時に詠まれた32首の梅の花の歌の序です。

そして新元号の出典となった「于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」の一文。

しかし続く

「加以、曙嶺移雲、松掛羅而傾盖、夕岫結霧、鳥封穀而迷林」「庭舞新蝶、空歸故鴈。於是盖天坐地、促膝飛觴」

もなかなかの味わい。

そこで「令和」という元号を迎え、浮かんできた Erik Wøllo の曲にのせて梅花の歌三十二首の序をどうぞ。

 


梅花謌卅二首并序

梅花の歌三十二首、序を并せたり


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大伴旅人_Wikipedia

「卅(ソウ)」とは、30を表す漢字。

廿 卅 卌 皕

これらは、甲骨文字では「一」、「二」、「三」、「亖(四の古字)」を縦にしたものである。ただし縦線の下端で互いにつながっている。甲骨文字では五十~九十を表す場合、五~九の下に縦線を加えて表された。金文では、線の中央に点が加えられるようになった。この点が横に伸び、現在の字形になった。 「廿(20)」の異体字に「卄」がある。また、「卅(30)」の異体字に「丗」があるが、「世」の異体字とも言われる。殷代では平均寿命が30歳ほどであったため、30年で1世代と考えられたためである。

Wikipedia

そういえば「正」の字のかわりに縦に線を四本引いて最後に横に一本引いて数を数えていたことがあります。

 


天平二年正月十三日、萃于帥老之宅、申宴會也。

天平二年正月十三日に、帥(そち)の老(おきな)の宅(いへ)に萃(あつ)まりて、宴會を申(ひら)きき。


 

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天平二年正月十三日に、大宰師の大伴旅人の邸宅に集まりて、宴会を開く。

 

「天平二年正月十三日」は 新暦では730年 2月 4日

古くは小正月までの「新年あけましておめでとうございます。」という言葉が使われる初春のめでたい松の内。つまり「宴」は歌会始といったところでしょうか。

 


于時、初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。

時に、初春の令月(れいげつ)にして、氣淑(よ)く風和(やはら)ぎ、梅は鏡前(きやうぜん)の粉(ふん)を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(かう)を薫(かを)らす。


 

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時に、初春の好き月にして、空気はよく風は爽やかに、梅は鏡の前の美女が装う白粉のように開き、蘭は身を飾った香のように薫っている。

 


Blue Sky – Erik Wollo

 

「氣淑風和」の「淑(よ)し」

意味

①しとやか。きよらか。品のある。「淑徳」「貞淑」

②よい。善良な。

③よしとする。よいとして慕う。「私淑」

 

そういえば、「淑子」という名をもつ女性は多くいました。

 

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李 香蘭_山口 淑子

 

子型の女性名

 

平安時代初期、嵯峨天皇が、皇女への命名法を改め、佳字1字に「子」を付けた「○子」という子型の名を内親王に与えた。これをきっかけに子型の女性名が貴族社会に広まり、平安後期には記録に残る全ての貴族の女性名が子型となるほどだった。

室町時代になり女性の実名を子型とする風習は続いたものの、実名自体が希となり、ほとんどの女性は子型の名を持たなくなった。

明治半ばからは、庶民の間にも、従来の2音の名に「子」を付けた、3音の子型の名が広まった。子型の女性名の比率は明治末期から昭和初期にかけ大きく伸び、第二次世界大戦を挟んだ1930年代から1940年代に80%超のピークとなったのち、減少に転じた。

昭和末期から平成に入っても子型の女性名の衰退は続いたが、現在は子型の女性名が増えている。これはキラキラネームなど、簡単には読めない名前の子供が多い中、敢えて古風で由緒正しいイメージがあり、誰でも読めるようにと、子型の名前をつける親が増えているからである。

 

さて、令和には子型の女性名はどうなるのでしょう。

 

「梅披鏡前之粉」の「梅」

実際のところ2月4日頃に梅が開花しているのかなと考えたのですが、歌の読まれた場所が九州の大宰府の邸宅ということで調べてみると、太宰府天満宮での梅の見頃は 1月下旬 ~ 3月上旬となっています。

 

「蘭薫珮後之香」の「蘭」

日本にも野生ランが317種もあるそうです。あの甘い香りのバニラはラン科バニラ属の蔓性植物。ということは蘭の花もそんな香りがするのでしょうか。

 


加以、曙嶺移雲、松掛羅而傾盖、夕岫結霧、鳥封穀而迷林。

加以(しかのみにあらず)、曙(あけぼの)の嶺に雲移り、松は羅(うすもの)を掛けて盖(きぬがさ)を傾け、夕(ゆふべ)の岫(くき)に霧結び、鳥は穀(うすもの)に封(こ)められて林に迷(まと)ふ。


 

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のみにあらず、明け方の嶺には雲が移り動き、松は薄絹のような雲を掛けてきぬがさを傾け、山のくぼみには霧がわだかまり、鳥は薄霧に封じ込められて林に迷っている。

 


Dream Lines – Erik Wollo

 


庭舞新蝶、空歸故鴈。於是盖天坐地、促膝飛觴。

庭には新蝶(しんてふ)舞ひ、空には故鴈(こがん)歸る。於是、天を盖(きぬがさ)とし地を坐(しきゐ)とし、膝を促(ちかづ)け觴(さかづき)を飛ばす。


 

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庭には蝶が舞ひ、空には年を越した雁が帰ろうと飛んでいる。ここに天をきぬがさとし、地を座として、膝を近づけ酒を交わす。

 

 


忘言一室之裏、開衿煙霞之外。淡然自放、快然自足。

言(こと)を一室の裏(うち)に忘れ、衿(ころものくび)を煙霞(えんか)の外に開く。淡然と自ら放(ほしきまま)にし、快然と自ら足る。


 

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人々は言葉を一室の裏に忘れ、胸襟を煙霞の外に開きあっている。淡然と自らの心のままに振る舞い、快くそれぞれがら満ち足りている。

 


Red Guitars – Erik Wollo

 


若非翰苑、何以濾情。詩紀落梅之篇。古今夫何異矣。宜賦園梅聊成短詠。

若(も)し翰苑(かんゑん)に非(あら)ずは、何を以(も)ちてか情(こころ)を壚(の)べむ。詩に落梅の篇を紀(しる)す。古(いにしへ)と今と夫(そ)れ何ぞ異ならむ。宜(よろ)しく園の梅を賦(ふ)して聊(いささ)かに短詠を成すべし。


 

これを文筆にするのでなければ、どのようにして心を表現しよう。中国にも多くの落梅の詩がある。いにしへと現在と何の違いがあろう。よろしく園の梅を詠んでいささの短詠を作ろうではないか。

 


Sedona – Erik Wollo

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