My「サマー・オブ・ラブ」_バート・バカラック

たぶん1971年当時、教室でこんな会話をしていた高校生は他にはいなかったでしょう。それは友人との間でしばらく続けたある議論。

「ビートルズとバカラックのどちらがすばらしいか。」


前回の ミスティック・ムード → サンホセの道 に続いて バート・バカラック → フィラデルフィア・サウンド → フュージョン → ニューエイジ・ミュージックと展開します。

まるで「風が吹けば桶屋が儲かる」的な音楽遍歴。

でもこれが My「 サマー・オブ・ラブ」なのです。


ビートルズとバカラック

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解散したばかりのビートルズはまだまだ人気があり、議論の形勢は押されぎみでした。

確かに、若者向けのビートルズの魅力はストレートで分かりやすかったのですが、ポピュラー音楽としての革新性はバカラックも負けてはいないと直感していました。しかし、親しみ易いバカラック・サウンドゆえにその独自性の説明が難しかったのです。


数あるバカラックのアルバムのなかでも一番のお気に入りだったのが、バートのソロ・アルバム『Burt Bacharach ‎– Reach Out』。


Burt Bacharach – Reach Out(1967年)


洋楽はボーカルもインストゥルメンタル。

当時、外国語のボーカルは、ネイティブのようにその意味を心に直に感じることが難しく、「声」という楽器の音色として、つまりヴォカリーズあるいはスキャットのように、ボーカルもすべて「インストゥルメンタル」として聴いていました。(現在も)

ビートルズの魅力のひとつとして、すばらしいメロディーと歌詞とのベストマッチングがありました。ここら辺りもすれ違い原因かも。

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ロックンロールとジャズ

ラウンジ・ミュージックファン好みの美しいメロディーやハーモニーを持つ曲はどんな音楽ジャンルにも見受けられます。

あの議論はある意味「ロックンロール・ブルース」ファンと「ジャズ・ワールド」ファンとの違いだったのかも知れません。

ロックとジャズの違いは基本のリズム。ロックはブルースの影響で三連の中抜きと言われるシャッフルビート、そして8ビートです。ジャズは多くがスウィングと呼ばれる4ビート。

どちらのビートの乗り心地が良いかは持って生まれた感性によります。

バカラックはデイジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーなどモダン・ジャズの起源といわれるビバップの革新的なジャズの影響によって、そのサウンドにはジャズテイストが感じられます。

さらに、バカラックは正規の音楽教育も受けていますのでクラシックの要素も持ち合わせています。(特にフランス印象派の影響)


ビートよりもスリル感

さらに、ロック的な「乗り」よりもバカラック独特の大胆な転調やテンポ・チェンジといった曲の技が生み出すジャズ的なスリル感の方に魅力を感じていたのです。

このように色々な要素が混じり合ってのバカラックなのでしたが、彼にそれをうまく伝えることができませんでした。
(50年を経てやっと彼にその違いを説明できる気がしています。)


The Beatles – Baby It’s You

アメリカの女性R&Bコーラス・グループであるシュレルズの1962年のヒット曲のビートルズによるカバー。マック・デイヴィッド、バート・バカラック、バーニー・ウィリアムスの共作。


そんな違いも曖昧な現在(いま)

ただ、60年代の「ジャズ・ロック」70年代の「クロスオーバー」を経て、より洗練された「フュージョン」というジャンルが現れることでその違いは次第に曖昧になり、ジャンルを超えていかに自分にフィットしているかどうかということがポイントになっていきました。


亡き王女のためのパヴァーヌ

面白いことに、そのビートルズファンの友人から紹介されたのが、ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』。

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Orquesta Filarmonica Requena – Pavane, Opus 50 Gabriel Fauré

ドビュッシー、ラヴェル、サティというフランス印象派の3大作曲家のひとりでバカラックを音楽の世界に導いた作曲家でもあるのです。それを彼から知ることになるとは意外でした。

彼のおかげで70年代にフランス印象派の楽曲を知ることができたのは幸運でした。

それは現在自分の到達点となっている「ニューエイジ・ミュージック」の原点でもあったからです。

 


元の原曲が聴きたくて

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ミスティック!! サウンド・オブ・サイレンス(1968年)に収められていたバート・バカラックの曲は、

The Look Of Love(恋の面影)(1967年)
Do You Know The Way To San Jose(サン・ホセへの道)(1968年)

の2曲。

元の原曲が聴きたくて、近所のレコード店で手に入れたのが『Dionne Warwick ‎– Burt Bacharach Song Book』(バカラック作品4曲入り)。

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I’ll Never Fall In Love Again
Do You Know The Way To San Jose
Promises Promises
I Say A Little Prayer

このときのソウル・ミュージックの世界との出会いがきっかけで、甘いストリングスが特徴的だったフィラデルフィア(フィリー)サウンドへ興味が広がりました。


The Temptations – Papa Was A Rolling(1972年)


MFSB – TSOP (The Sound Of Philadelphia)(1974年)

振り返ってみれば、この頃に’70年代後半に始まるディスコブームへの下地が培われていたようです。

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君の瞳に恋してる。ディスコ自分史_SUDAREの部屋


そして26年後、やっぱりカッコいい。


The Temptations – Papa Was A Rolling(1998年)


バカラック・サウンドの魅力

実際に手にして聴いてみたバカラック・サウンドは、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドのような積み上げによる分厚い音づくりとは、まったく異なりました。

意表をついた間(リズム)と楽器の使い方がその最大の特徴で、フリューゲルホルンの使い方はその象徴と言ってよいでしょう。それと中南米のサウンド(ボサノヴァやマリアッチなど)をいち早くポップスに取り入れたワールド・ミュージック指向の元祖とも言える存在でした。

そこに、これまで聴いていたイージーリスニングの表現に収まらない何かを感じてもっと彼の曲を聴きたくなりました。

当初はバカラックは作曲家なのでそこから曲を探すのは難しいと考えて、レコード店を訪れるたびにディオンヌの新譜に気をつけていたのですが、なかなか新曲を見つけることができません。

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よく通った小さなレコード店のあった商店街。ここにないレコードは遠い駅前のレコード店までバスで行くしかありませんでした。

『明日に向って撃て!』

そんなところにタイミング良く『明日に向って撃て!』(1969年)のテーマ曲「雨にぬれても」の大ヒット。その作曲家としてバカラックにもスポットが当てられました。

 

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Make It Easy On Yourself(1969年)

 

おかげでバカラック関連のベスト盤が発売されたため、彼の出世作の「Don’t Make Me Over」(1962年)まで、過去の発表曲を一気に遡ることができました。

1962年
「ドント・メイク・ミー・オーヴァー(Don’t Make Me Over)」

1964年
「ウォーク・オン・バイ(Walk On By)」
「遙かなる影(Close to You)」

1965年
「世界は愛を求めてる(What The World Needs Now is Love)」
「何かいいことないか子猫チャン(What’s New Pussycat?)」

1967年
「アルフィー(Alfie)」
「カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」
「恋の面影(The Look of Love)」
「小さな願い(I Say A Little Prayer)」
「リーチ・アウト(Reach Out For Me)」

1968年
「サン・ホセへの道(Do You Know The Way to San Jose)」
「ディス・ガイ(This Guy’s in Love with You)」
「小さな願い(I Say A Little Praye)」
「プロミセス・プロミセス(Promises Promises)」

1969年
「雨にぬれても(Raindrops Keep Fallin’ on My Head)」
「恋よ、さようなら(I’ll never fall in love again)」

そして、70年代のカーペンターズへとつながっていきます。


Carpenters – Close To You(1970年)


バカラックの「ソロ」が好きでした。

カーペンターズの「遙かなる影」を聴いた時、それがディオンヌの「(They Long to Be) Close to You」ということはすぐにわかったのですが、カーペンターズのアレンジの方がずっとバカラックの曲らしくてすぐに気に入りました。

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ディオンヌについてはバカラックも後にこう語っています。

あのディオンヌのレコードは発表したくなかった。テンポが速すぎた。私は喜び勇んで、大きな過ちを犯してしまった。アレサのレコードはとても気に入っているよ。素晴らしい。あちらは聴くたびに、にっこりとさせられるね。

バート・バカラック

数あるバカラックのアルバムのうち、ディオンヌではないバカラックのソロ・アルバム『Burt Bacharach ‎– Reach Out』(1967年)がいちばん気に入っていました。

不思議なことに当時確かに聴いていた記憶があるのですが、Discogs によればこのLPが日本で発売された記録が見当たらなくてCDのみになっているのです。(いくつかのシングル盤で聴いたのかも知れません。)

ちなみに Discogs では「ジャンル:Jazz スタイル:Easy Listening」となっています。

 


涙をこえて

1970年、NHK総合テレビで全世界を覆った学園紛争の嵐で傷ついた若者の心を癒し、良質の音楽を紹介しようという意図で企画された『ステージ101』という番組がスタートしています。

そのなかで歌われた「涙をこえて」は、和製バート・バカラックぽい曲だった気がした記憶が残っています。

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涙をこえて – シングアウト(1969年)

 


ニューエイジ・ムーブメント

作曲をバート・バカラックが担当した『プロミセス・プロミセス』は、映画『アパートの鍵貸します』(1960年)を原作とするミュージカル。

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この『アパートの鍵貸します』で印象に残っているのは、テニスラケットでスパゲッティ茹でるシーン。それを横から眺めているのが、シャーリー・マクレーン演じるエレベーターガールのフラン・キューベリック。

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シャーリー・マクレーンは、ニューエイジ思想に感銘を受け、前世からのカルマの解消には自己を磨くこと、自己啓発が必要であり、精神(魂)のあり方が現実を左右すると考え、スピリチュアルな自伝的著作を発表し、転生思想・チャネリング・ネガティブなものからの解放・大いなる自己との出会いを語り、批判や冷笑も集めたが、ニューエイジ思想を西洋世界に広めた。

Wikipedia

ビートルズや、アップル創業者スティーブ・ジョブズなども、ヒッピー・ムーブメントにコミットしていました。特に世代といい、育った場所といい、ジョブズがヒッピーでニューエイジな人なのは自然なことと思います。

また、ジョン・デンバーはコロラド州スノーマス近郊にニューエイジ・コミューンを作り、合気道によって宇宙精神と合致することを目指し、ピラミッドのなかで瞑想を行い、将来自分が大統領になることなどを信じて生活をしたそうです。

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ただ、みんなそんなに深みにはまらずにその思想のほのかな香りを時代にマッチさせたからこそ、すばらしい作品(製品)が生まれたような気がします。


似て非なる「ニューエイジ」と「スピリチュアリズム」

難しいことは分かりませんが、ニューエイジは米国風で、スピリチュアリズムは英国風。ニューエイジは仏教色、スピリチュアリズムはキリスト教色。ニューエイジは緩く、スピリチュアリズムは厳格。

といった違いがあるらしいのです。

でも八百万の神々と自然界の精霊達がひしめき合う日本に生まれ育った身としては、そのどちらでもない世界が好きです。

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今日の一曲

今日は、フリューゲルホルン二題。

バカラックの曲とフリューゲルホルンはとてもよく似合います。

そして宮崎駿の作品も。

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もののけ姫【フリューゲルホルンで演奏してみた!】

もうひとつ、

ニューエイジ・ミュージックのアンビエントジャンルで活躍するトランペット/フリューゲルホルン奏者のジェフ・オスター(Jeff Oster)の曲。


Jeff Oster – And We Dance(feat. Will Ackerman)

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