三人目のスティーブ

Apple のウォズとジョブズという二人のスティーブの存在は、自分にとっても影響があったわけですが、さらにもうひとりのスティーブのことも忘れることはできません。


Rebekah Del Rio – No Stars (Twin Peaks 2017)

渋谷パルコ閉館

昨年の夏、かつて若者のファッション文化の発信地だった渋谷パルコがその43年の歴史に幕を降ろしました。

瑞々しい感性を発信し始めていた頃へのオマージュを感じさせるポスターともに。

20170918_08-2017-09-3-16-10.jpg
2016年8月7日、リニューアルのため渋谷パルコ閉館。

20170918_09-2017-09-3-16-10.jpg
西武百貨店の「不思議、大好き。」で始まった80年代。(1981年)

そこには青空。


落下したスマートフォン


This ain’t my phone…

今年 8月12日に Youtube に公開された、飛行機から落ちて偶然回収されるまでずっと動画を撮り続けたスマートフォンの映像が話題になりました。

フェイク映像とかサムスン電子による印象操作ステマなどいろいろいわれていますが、確かにフェイク溢れるこのご時世、本当のところはよく分かりません。

気になったのは、落下中や拾われる過程の映像よりも着地後の雲が過ぎゆく風景。

20170917_01-2017-09-3-16-10.png

この画像がほんとうだった場合、スマートフォンが録画していた時には辺りに誰もおらず、単なるレンズを通過した光の点の集まりにしか過ぎないのですが、それを人が見たときに初めて意味を持ったわけです。

フェイクだった場合には、すぐ横に人がいて意図的に空の方向にレンズを向けていたかもしれません。そのときにはこの映像はすでに人を操る意図を持って撮られていたことになります。

でも、画像は同じ。

ただ、その画角と建物に切り取られた青空の風景には、空の向こうにあるもの、ひたすら流れ去る雲の示す自然の営みと時間、眺めるこちら側の心の在りようなど、いろいろ考えさせられるものがありました。


幻のアルバム『渚にて』

20170903_07-2017-09-3-16-10.jpg

この夏リリースされたソニーミュージックショップの AOR CITYシリーズ第2弾。

オーダーメイドファクトリー(OMF)
廃盤となり入手困難な商品や、新たなベスト盤企画、貴重な未発表音源やブックレットが付いた豪華BOXセットなど、様々なタイトルを皆様のご予約によって商品化してお届けするサービスです。 設定された予約期間内に、予約数が規定の数に達した場合のみ商品化決定となります。

Sony Music Shop

AOR CITYシリーズ第2弾に発見したのは、スティーブ・ハイエットのアルバム『渚にて』でした。


Steve Hiett – 渚にて Down On The Road By The Beach(1983年)

20170903_03-2017-09-3-16-10.jpg

これは1983年に発表されたスティーブ・ハイエット唯一のアルバムで、日本でのみ発売された幻の作品なのです。再び商品化されたということは、根強いファンがいまだに多いのですね。

そして思い出したのは、幾何学的な線で切り取られた青空の記憶。


三人目のスティーブ

Apple のウォズとジョブズという二人のスティーブの存在は、自分にとっても影響があったわけですが、さらにもうひとりのスティーブのことも忘れることはできません。

スティーブ・ハイエット

スティーブ・ハイエットは、自分にとって忘れることのできない三人目のスティーブでもあります。

20170903_01-2017-09-3-16-10.jpg

写真はあなたが見ていることを記録しています。ファッション写真はあなたが何を考えているのかを描いています。それはあなたの想像力に基づいて構築されたプロセスです。

Steve Hiett

『2001年宇宙の旅』以来10年ぶりに感動したのが、彼の写真集。

幾何学的な線で切り取られたコダクロームの青空の世界に魅了されてしました。

それからずっと、見上げる空に重ねて、もうひとつの心象風景の青空を求めるようになったのです。

それはアルバム『渚にて』より 5年ほど前に遡ります。


視覚の造形(1977年)

20170903_02-2017-09-3-16-10.jpg
視覚の造形(日本版1977年)

ハイエットについては、このブログを書き始めた2007年頃にちょうど30年前の想い出として書き綴っています。


静寂の風景
SUDAREの部屋 2007年 2月10日

街を歩いているときに、ひっそりと佇んでいる静かな風景にふと気付くことはありませんか。

20170917_03-2017-09-3-16-10.jpg

そんな瞬間に合いたくて目的もなく街を歩き続けることがたまにあります。

それはある写真集を見てから見えてくるようにになったのです。

私は、これらの絵を探したわけではありません
不思議なことでもないのです
幸運なことに、その風景が目の前に現れたとき
私はカメラを持っていました
その時ははいつもまわりに誰一人いなかったように思います
人間がつくったところなのに人間がいないのです
それぞれの場所で私は眺めを楽しんでいました
ただそれだけです

Steve Hiett 1975_Pleasure Places

お気に入りの写真集「視覚の造形」

20170917_02-2017-09-3-16-10.jpg

都市が瞬間にふと見せる静寂の風景をコダクロームの深い味わいで切り取っています。

フレームで切り取られた一片の風景は別の世界を語りかけてくれます。
もう入手困難なようなので大切に扱っています。


ファッション写真

その後、 スティーヴ・ハイエットの作品は1983年のアルバム『渚にて』発売を機に日本でもその存在が知られるようになっていきます。

20170917_04-2017-09-3-16-10.jpg

このハイエットは「Vogue」などのファッション写真で活躍していた方なのですが、ファッション写真でもモデルと風景の対比が深い印象を与える数々の作品を残しています。

絶妙な色飽和、オフセンターフレーミング(後には眩しいフラッシュ)が特徴の彼の写真は、ファッション誌に単なるファッション写真を越えた世界を表してくれました。

ハイエットの写真はさまざまな意味が幾重にも映し込まれているような感じで、モデルと背景が対等に主張してもバランスがとれているのですが、モデルを消して背景だけにしても、残された空間だけでも何かを語り始めるのです。

20170917_05-2017-09-3-16-10.jpg
ONE CHILD、ONE BALLOON(2010年)


Beyond Blonde (2015年)

20170917_06-2017-09-3-16-10.jpg

「Beyond Blond」は、ハイエットの50年にわたるキャリアを旅する回顧録。

「ブロンド女性の向こう側」といった意味なのでしょうか。ファッションモデルと風景の対比された画像が深い印象を残すハイエットらしいタイトルです。

モデルはしばしば背中になったり、顔がサングラス、カメラ、電話、髪、タバコを持った手、郵便ポストでマスクされています。

そして背景が主役のモデルと同じぐらいの意味を持って映し込まれ、幾重にも織込まれた画像には単なるファッション写真以上のものを語りかけてきます。

20170917_07-2017-09-3-16-10.jpg
ロシアに電話する


20170903_05-2017-09-3-16-10.jpg
20170903_06-2017-09-3-16-10.jpg

20170917_08-2017-09-3-16-10.jpg

20170903_04-2017-09-3-16-10.jpg

現在も目の前をさまざまな新しい映像が現れては消えていくのですが、既視感を感じるステロタイプなものばかりで、ほんとうに深く感動するものが少なくなってきています。

もう、この孤独で耽美なコダクロームの青の世界から抜けだすことはないのかもしれません。


本日の一曲


Ofra Haza – You(1997年)

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中