ジブリのいない夏 2017

志を持って天下に働きかけようとするほどの者は、自分の死骸が溝っぷちに捨てられている情景をつねに覚悟せよ。

司馬遼太郎の『竜馬がゆく』

今年もジブリ後継者たちの活躍は続いています。


『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』(2017年3月)

『2001年宇宙の旅』ファンが観た『スター・ウォーズ』の様な感想。監督は背景美術出身なので、綺麗ですね。

そして7月。


『メアリと魔女の花』(2017年)

「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」で知られる米林監督の最新作で、同じくジブリ出身の西村プロデューサーが設立したスタジオポノックによる第1回長編作品。2014年12月にジブリを退社して以後、「何も(拠り所が)なく、喫茶店をめぐりながら脚本を練っていたところから」製作は始まった。ついに完成を迎え、米林監督は「西村さんに、『思い出のマーニー』とは真逆の、動くファンタジーを作りたいと言い、今日までやってきました。こういう場に立てたことが夢のようです」と感慨深げだ。

『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』。彼の描く少女のキャラクターには、海外制作されたジブリといった印象が常にあります。それが監督の意図したものであれば成功なのかもしれません。

伽藍堂

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2014年、米林宏昌監督と西村プロデューサーのタッグで作られた『思い出のマーニー』のプロモーションで全国を回り、東京に戻るとジブリのスタジオは「がらんどう」だった。

ジブリと宮崎駿の呪い “リストラ”された後継者たちの「その後」

「宮崎さんには見てもらえませんでした。『俺は見ない』って」

でしょうね。


ジブリ作品に求められているもの。

ジブリスタイルは真似することはできるかもしれませんが、宮崎駿監督の発想は真似ができません。

(ただし、近藤喜文監督の『耳をすませば』は例外。)

スタジオジブリ作品には「繰り返し観ても面白く、外れがない」という安心感があります。高い入場料を払って劇場公開に足を運び、さらにDVD版を購入して繰り返し観ても、いろんなシーンで新しい感動を得ることができます。

そんな万華鏡のような作品を多くを制作したスタジオジブリは自らのブランド化に成功して、「興行収入10億円がヒットの目安」といわれる映画業界でコンスタントに高い興行収入を揚げることのできるようになりました。

興行成績100億というライン

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宮崎駿監督作品

いったい観客はジブリスタイルの何を求めているのでしょうか。

同じジブリ作品でも、宮崎駿監督作品とその他監督作品に大きく分けることができると思います。それを仮に「宮崎駿ジブリスタイル」と「その他ジブリスタイル」とします。

その他ジブリスタイルの『借りぐらしのアリエッティ』(92.5億円)『ゲド戦記』(76.5億円)『コクリコ坂から』(44.6億円)『思い出のマーニー』(35.3億円)この数字はスタジオジブリのコアファン層のものでしょう。

対する「宮崎駿ジブリスタイル」のジブリ上位5作品はすべて100億越え。

「スタジオジブリ総選挙」の中間結果でも、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』が上位5作品に選ばれていました。

(最終結果では二位以下は発表されていませんが、たぶん順位は変わっていなかったでしょう。これらもすべて「宮崎駿ジブリスタイル」。)

この違いは何故でしょう。

興行収入100億円を超える大ヒット作品を「コンスタント」に生み出すのに必要なのが、解決の難しい身近に潜む普遍的なテーマと卓越した選曲。そして世代を継ぐリピーターの獲得。それらはコアファンのみならずライトなファンまで広範に巻き込む力を発揮します。

神は細部に宿る(God is in the details)

ストーリーを追うことで得られる感動ではなくて、観た瞬間、直感的に感じられる感動。

そのための表現手段としてジブリスタイルを創り上げ、単に絵が綺麗なだけではなく、ジブリスタイルをベースにシーンごとに繊細な宮崎監督独特のアイデアと表現を数多く加えたのが「宮崎駿ジブリスタイル」ではないでしょうか。


現在のスタジオジブリの状況

まだまだ高いスタジオジブリのブランド力。

「ブランド・ジャパン 2017」の「総合力」ランキングでスタジオジブリが、2006以来2回目の首位を獲得しました。11年ぶりのことです。

 スタジオジブリは、新作映画「レッドタートル ある島の物語」に先駆け、2016年8月に「スタジオジブリ総選挙」をレッドタートルのWebサイト上で開催した。その結果、「千と千尋の神隠し」が最も票を集め、一週間限定の上映が全国5都市(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)で行われた。
また、「スタジオジブリ」の設立から新作までの30年間の歩みと、ジブリの作品作りに対する本気度が伝わる博覧会・展示会を全国5都市(東京、静岡、新潟、愛媛、熊本)で開催した。内、開催2地区の開催施設では、来場者記録を更新した。こうしたファン参加型の施策が総合力を構成する1要素である「フレンドリー」の向上に寄与したと考えられる。
もう一方の強みである「アウトスタンディング」では、首位を獲得。オリジナルアニメーション映画カテゴリーの草分けでありオーソリティでもあるスタジオジブリであるが、差別性や個性を表す「アウトスタンディング」の高評価をみると、このカテゴリーに対する強い紐づき、いわばブランド・レレバンス(関連性)が非常に高いことが分かる。
また、同ブランドの顔である宮崎駿氏が11月に放送されたNHKの特番に出演し、最新の動画制作に関する討論で話題となるなど、作り手の意思を感じさせるコミュニケーションが「アウトスタンディング」の向上に寄与したと考えられる。

「ブランド・ジャパン2017」調査結果発表

ちなみに第2位以下は YouTube、アマゾン、ディズニーの順。

これは2016年の企業活動の結果です。

2013年の宮崎駿監督引退発表、2014年のスタジオジブリの制作部門解散以降も、「ジブリの大博覧会」「ジブリの立体建造物展」「スタジオジブリ・レイアウト展」「近藤喜文展」を全国で巡回展示して、ブランド力の維持努力を図ってきたスタジオジブリ。

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2016年9月には、新作アニメ『レッドタートル ある島の物語』公開プロモーションとして、「スタジオジブリ総選挙」を開催。期間限定上映で眠れるジブリファンを再び目覚めさせました。

ところが、

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9月に公開された『レッドタートル ある島の物語』は興行的に失敗。

一方、アニメ映画は『君の名は。』を先頭に『聲の形』『この世界の片隅に』といった話題作が生まれました。


『君の名は。』不思議なのは、

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なかでも話題となった『君の名は。』は、日本歴代興行収入では249.9億円で『アナと雪の女王』(254億円)まであと5億円のところまで迫りました。

同時に再び注目されたのが、超えられなかった『千と千尋の神隠し』のすばらしさ。

不思議なのは、

『君の名は。』について不思議なのは、

  • 上映期間中『千と千尋の神隠し』『アナと雪の女王』ほどの全世代的な熱気を感じなかった
  • これほどのヒットの割には店頭で関連グッズ類をあまり見かけなかった
  • 劇中曲がTV番組のバックにあまり利用されていない
  • ゲオアプリ会員という比較的アニメに関心のある層でのアンケート結果でさえ、劇場で見た人27%に対して、DVDを購入予定の人が約5%という結果が出ている

ことなど。

こどものころ金曜ロードショーで観ていたジブリ作品、
今度は映画館に娘を連れて観にいってみようかな。

今後『君の名は。』という作品が、世代を継いで感動を与え続けられるかどうかという点が注目されます。

『君の名は。』は LINE 的?

アカデミー賞の候補から外された理由についてはよく分かっていませんが、メッセージアプリの「LINE」の流行がヒントになるかもしれません。

メッセージアプリといえば東アジアでは日本「LINE」中国「ウィーチャット」韓国「カカオオーク」が有名で群雄割拠といった状態ですが、世界に目を向けると「WhatsApp」と「Facebook Messenger」が圧倒的。

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宮崎駿作品は WhatsApp 的要素も持っているといえそうです。


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ジブリのいない夏 2016

2016年11月に放送されたNHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」の番組中で紹介された、宮崎監督の再活動開始の様子。監督の現役復帰を待ちわびるファンの期待が高まりました。

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2017年 2月には、長編アニメ映画製作から引退を表明した宮崎駿監督が新作長編の準備に入ったと、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが明らかに。


Oscar Week 2017: Animated Features

この会見を最初からじっくり観ると、やはり『レッドタートル ある島の物語』のスタジオジブリ初の外国人監督起用と海外プロダクションでの制作動向が気になっていたようです。

そして『レッドタートル ある島の物語』の興行的失敗。

斃れて後已む(たおれてのちやむ)

「宮さんが絵コンテ描いて死んじゃうと。」
「そうすりゃ映画は大ヒットですよ。」

このことが「終わらない人 宮崎駿」で紹介されたように、スタジオジブリでの制作再開にきっかけになったのかもしれません。

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そして、2017年 5月19日のスタジオジブリの宮崎駿監督の引退撤回発表

すでにテレビ等でご存じかと思いますが、宮崎駿監督は最後の長編アニメーション映画に取り組み始めました。

「風立ちぬ」から4年、三鷹の森ジブリ美術館のための短編映画「毛虫のボロ」で、若いスタッフと共に苦手なCG技術にも野心的に向き合い、ついに完成させました。一方、この間、昔からの大切な仲間を何人も亡くし、自分自身の終焉に関してより深く考える日々が続きました。

ここに至り、宮崎監督は「引退撤回」を決断し、長編アニメーション映画の制作を決めました。作るに値する題材を見出したからにほかなりません。年齢的には、今度こそ、本当に最後の監督作品になるでしょう。

スタジオジブリ


ジブリのいない夏 2017

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『君の名は。』の原画にジブリ経験者が多いことから、ジブリ制作部解散と関係があるとよく語られます。

確かに、再び盛り上がってきたジブリアニメへの期待に対して、一番肝心な宮崎アニメが不在で、そこから「ジブリ風」アニメ映画へ関心が向かったようにも感じられます。

そして『レッドタートル ある島の物語』制作中に宮崎駿監督が感じた、みんなが求めている正統派のジブリ作品を提供できないことへの悔しさ。

それが監督復帰発表へと繋がったのでしょうか。

自分も加齢に伴う能力の衰えを実感する度に、自分より高齢の宮崎駿監督にとってそれがどんなに大変なことかということもよく解るつもりです。

それでもあえて、

中期以後は面白さの質が低下している、とも評される現在のジブリ作品ですが、頂点といえる『千と千尋の神隠し』を越える最高傑作の監督作品を期待しています。

そして若者たちもガンバレ。


再び、やっぱり『千と千尋の神隠し』でした。

21世紀の偉大な映画ベスト100 Part2

2017年 6月、ニューヨーク・タイムズ紙が「21世紀の映画 ベスト25作品(現時点において)」を発表しました。

1.        There Will Be Blood (Paul Thomas Anderson, 2007)
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
2.        Spirited Away (Hayao Miyazaki, 2001)
『千と千尋の神隠し』
3.        Million Dollar Baby(Clint Eastwood, 2004)
『ミリオンダラー・ベイビー』
4.        A Touch of Sin(Jia Zhangke, 2013)
『罪の手ざわり』
5.        The Death of Mr. Lazarescu(Cristi Puiu, 2006)
『ラザレスク氏の最期』
6.        Yi Yi: A One and a Two (Edward Yang, 2000)
『ヤンヤン 夏の想い出』
7.        Inside Out(Pete Docter, 2015)
『インサイド・ヘッド』
8.        Boyhood (Richard Linklater, 2014)
『6才のボクが、大人になるまで。』
9.        Summer Hours(Olivier Assayas, 2008)
『夏時間の庭』
10.        The Hurt Locker(Kathryn Bigelow, 2008)
『ハート・ロッカー』

2016年 8月に発表されたBBCの「21世紀の偉大な映画ベスト100」

1.        Mulholland Drive (David Lynch, 2001)
『マルホランド・ドライブ』
2.        In the Mood for Love (Wong Kar-wai, 2000)
『花様年華』
3.        There Will Be Blood (Paul Thomas Anderson, 2007)
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
4.        Spirited Away (Hayao Miyazaki, 2001)
『千と千尋の神隠し』
5.        Boyhood (Richard Linklater, 2014)
『6才のボクが、大人になるまで。』
6.        Eternal Sunshine of the Spotless Mind (Michel Gondry, 2004)
『エターナル・サンシャイン』
7.        The Tree of Life (Terrence Malick, 2011)
『ツリー・オブ・ライフ』
8.        Yi Yi: A One and a Two (Edward Yang, 2000)
『ヤンヤン夏の想い出』
9.        A Separation (Asghar Farhadi, 2011)
『別離』
10.        No Country for Old Men (Joel and Ethan Coen, 2007)
『ノーカントリー』

昨年発表されたBBCと比較してかなり入れ変わっています。イギリスとアメリカの批評家達の嗜好の違いがなんとなく分かるランキングです。

共通なのは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『千と千尋の神隠し』『6才のボクが、大人になるまで。』『ヤンヤン 夏の想い出』の4作品。

やはり、これらの内容の奥深い作品からは、普遍的な感動を受けるのでしょう。


本日の一曲

また夏が来ます。


Summer-久石譲

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