4月26日から最後の任務として再度土星に接近観測後、今年の9月15日に土星の大気圏に突入して運用終了する土星探査機カッシーニ。
カッシーニによるリアルな画像が届けられる度に思い起こされるのは、すでに50年前の映画となった『2001年宇宙の旅』。
はじめて観たときの感動と映像表現のすばらしさが何度も蘇りました。
同時に、はるか昔から人間のスケールでは及びもつかない世界が、実際に厳然と存在していることを再び心に刻んで、自分の人生を振り返ったり。
そんなカッシーニとも、もうすぐお別れです。
NASA at Saturn: Cassini’s Grand Finale
■ 1997年 打上げ
カッシーニ(Cassini-Huygens)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)によって開発され、1997年に打上げられた土星探査機。
2001: A Space Odyssey- Blue Danube
それは「ジョブズの Apple 」がスタートした年でした。

この頃 Apple は業績低迷と次期OSを巡っての大波乱状態でした。このまま倒産して無くなってしまうかもと、ハラハラしていたときのジョブズ復帰。この年から「ジョブズの Apple」の大躍進が始まりました。
■ 2000年 スイングバイ
スイングバイは天体の公転運動を利用することで宇宙機を増速あるいは減速すること。
カッシーニは2000年に木星でスイングバイを行ない土星軌道に向かいました。
2001: A Space Odyssey – Mission to Jupiter
『2001年宇宙の旅』の映画版では目的地は木星ですが、小説版では土星に変更されて、同じく木星で重力によるスイングバイを行なっています。
新しい Mac OS もスイングバイ開始。

■ 2004年 土星軌道に投入成功
カッシーニの土星周回軌道
あなたには右回転に見えますか? 左回転に見えますか?
(たぶん右回転に見えていると思いますが、じっと見ていると左回転を始めることもあります。)
これはシルエット錯視と呼ばれる錯視のひとつで、画像に奥行きの基準となるものが存在しないと生じるそうです。
現在の iMac の原形となる iMac G5 が発表された年でした。

■ メタンの霧雨_衛星タイタン
カッシーニは土星の第6衛星タイタンにホイヘンス探査機を放出。その着陸が成功して、大気の組成・風速・気温・気圧等を直接観測することができました。
メタンの霧雨
その結果、タイタンの上空には目視が困難なほどの薄い雲が2層存在し、その内下層の雲からはメタンの霧雨が降っていることが明らかに。
ところで、メタンの霧雨煙る風景ってどんな感じなのでしょうか。
■ 氷のプルーム_衛星エンケラドス
土星の第2衛星エンケラドスが氷のプルーム(立ち上る煙状のもの)を活発に吹き上げていることを発見。地球外生命が存在が期待されています。
エンケラドスの間欠泉
地球外生命体
米航空宇宙局(NASA)は2017年4月13日、木星の衛星エウロパと土星の衛星エンケラドスについて、地球外生命が存在できる可能性が特に大きいことを裏付ける新たな証拠が見つかったと発表した。特にエンケラドスは、生命に欠かせない要素がほぼ全てそろっているという。
エウロパ・リポート
(エウロパは土星ではなく『木星』の衛星です。)
小説版『2010年宇宙の旅』での第二部「チェン」
中国の宇宙船チェン号が推進剤としての水を補給するために木星の衛星エウロパへの着陸。作業中にエウロパに生息していた生命体による妨害に遭い全滅。
なぜか映画版では省かれたこのパートは、小説版『2010年宇宙の旅』で特に印象に残っています。同じ思いを持った読者も多かったようで、2013年に映画化されています。
Europa’s fatal monster(Europa Report MV)
■ 最終ミッションの開始
4月27日、宇宙観測史上初めて土星の輪の中に突入する任務を開始しました。これから週に1度のペースで輪の中に入り、最終的には22回の土星接近を行います。
そして 9月には、20年にわたるカッシーニの観測は、今年カッシーニ本体を土星の大気圏に突入することで終了します。
土星の大気圏に突入して燃え尽きる、その最後の瞬間にカッシーニが発信するメッセージは、約1時間後に地球に届く予定です。
2010 Odyssey – Jupiter Ignition (Final scene)
20年という歳月は、記憶を微かな断片に変容させるのに十分な時間。終わりが見え始めると、別れの感慨もひとしおです。
■ そして、2017年 9月15日、グランドフィナーレ
Cassini’s Grand Finale, 15 September 2017
とうとう最後の瞬間がやってきて、そして過ぎていきました。
さようなら、カッシーニ。夢をありがとう。
Cassini: A Saturn Odyssey
同じ日、地球では北朝鮮による弾道ミサイル発射。
まったく人間というものはいつまで経っても悲しい存在とカッシーニも溜息をついていることでしょう。
本日の一曲
Peter Calandra – Points In The Sky(2017年)