アニメの風景_『あたしンち』_リアルみかんの頃

種の保存の本能からくるものでしょうか、同じ時間に女性の観察する領域は男性の2倍もあると聞いたことがあります。それが日常系アニメのヒット作を生み出す特性なのでしょうか。

リアルみかんの頃(1980年代初頭)

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日々の暮らしに起きたエピソードを折り込みながら、何年放送してもキャラクターの年齢は変わらない女流マンガ家の日常系アニメ。

メジャーなものとして、『ちびまる子ちゃん(1986年掲載開始)』『耳をすませば』『あたしンち』があります。

作者に注目してみますと、

けら えいこ 1962年生まれ『あたしンち』原作者
柊  あおい 1962年生まれ『耳をすませば』原作者
さくらももこ 1965年生まれ『ちびまる子ちゃん』原作者

著名な日常系マンガの女性作家はみんな60年代前半生まれ。意外に年代が近いのです

作者がモデルとすれば、登場人物は

立花 みかん 1962年生まれ『あたしンち』1979年(17)
月島  雫  1962年生まれ『耳をすませば』1979年(17)
さくらさきこ 1963年生まれ『ちびまる子ちゃん』1980年(17)

立花ユズヒコ 1965年生まれ『あたしンち』1982年(17)
さくらももこ 1965年生まれ『ちびまる子ちゃん』1982年(17)

ということになります。


クリスタルキング 大都会(1979年)

つまり、みかん17歳の頃は80年代。
ケータイもインターネットもなかった頃。

トランプ大統領で話題となった80年代前半の輸出増大期と円高不況前に青春を送った「谷間世代」に位置します。

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トランプ・タワーも(1983年)

この80年代前半には、

  • ポカリスエット(1980年)
  • 『THE MANZAI』漫才ブーム(1980年)
  • 神奈川金属バット事件(1980年)
  • 校内暴力急増(1980年)
  • 暴走族最盛期(1981年)
  • なめ猫(1981年)
  • テレホンカード(1982年)
  • CDプレーヤー発売(1982年)
  • 東京ディズニーランド開園(1983年)
  • ファミコン発売(1983年)
  • 積み木くずし(1983年)
  • NHKドラマ『おしん』(1983年)
  • グリコ森永事件(1984年)

などが起きていて、テクノロジー関連の明るい話題と人間関係の暗い話題が交差していた不思議な印象。

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この頃の記憶には、日本人に何か共通する特別な思いが残っているのでしょうか。

1980年代は等身大の女性を丁寧に描く作家が多くなり、シンプルな背景にキャッチライトが入らない目の人物像を描く漫画家が増えた時代。(みかんには特別なときをのぞいて、キャッチライトどころか黒目も入りません。)

1980年代日本の貿易黒字が世界最高になり、職業選択の幅も広がる、と同時に女性の生き方にも多様性が出てきた。女性向け就職情報誌が誕生、宅配便が発展したり、マイコン技術による多品種小量生産が広がっていき、ビデオやウォークマンという個人化的製品がヒットし、軽薄短小とか分衆という言葉が誕生し、またいじめ問題が注目された。この時代には、紡木たく、吉田秋生といった、従来の少女漫画と一線を画す画風の漫画家が人気を博し、従来の少女漫画的な装飾的表現は簡略化されていく。等身大の女性を丁寧に描く作家が多くなり、シンプルな背景にキャッチライトが入らない目の人物像を描く漫画家が増えた。

少女漫画_Wikipedia

作者もそんな時代の潮流の真っただ中で、漫画を描くことに未来を託して青春の日々を過ごしていたわけです。

花の82年組

ちなみに芸能業界では、「スター」から「アイドル」システムへ移行を始めます。

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松田聖子   1962年生まれ 1979年(17)
河合奈保子  1963年生まれ 1980年(17)
薬師丸ひろ子 1964年生まれ 1981年(17)

続く60年代後半生まれは、

松本伊代   1965年生まれ 1982年(17)
小泉今日子  1965年生まれ 1982年(17)「花の82年組」

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中森明菜   1965年生まれ 1982年(17)「花の82年組」
斉藤由貴   1966年生まれ 1983年(17)
三田寛子   1966年生まれ 1983年(17)「花の82年組」
石川秀美   1966年生まれ 1983年(17)「花の82年組」
伊藤つかさ  1967年生まれ 1984年(17)
堀ちえみ   1967年生まれ 1984年(17)「花の82年組」
原田知世   1967年生まれ 1984年(17)「花の82年組」

みんな17歳の頃は80年代前半。遅れて

武田久美子  1968年生まれ 1985年(17)
菊池桃子   1968年生まれ 1985年(17)

といったように時代に対応した「アイドル量産」の時代でもありました。

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残念ながらこのアイドルブームの頃にはすでに社会人。ディスコブームの真っ只中にいましたので、記憶にあるのは彼女ぐらい。


薬師丸ひろ子 メイン・テーマ(1984年)

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1964年生まれで同じ身長155cmの薬師丸ひろ子のほっぺをぽちゃりさせたのが「みかん」のイメージ。

(作者の「蝼川内」は大分県と福岡県に、「薬師丸」姓は福岡県に多い三文字希少姓ということで、祖先をたどれば遺伝子的にも近いかも?と勝手な推測。)

そして、1985年


渡辺美里 My Revolution(1986年)

9月22日 アメリカのニューヨークでG5がプラザ合意。翌日ドルは暴落。元も暴落し、日本円は1ドル200円台から100円台に高騰した。この後日本は円高不況を経てバブル景気へ向かい、日本が変質し始めるのです。

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1990年とある日の記憶

記憶に鮮明に残る、自分以外の全員が日経新聞の株式欄を読んでいた昼休みの喫茶店の異常な光景。

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「こんな世の中変だ。」と感じていたバブルの喧騒の中、何となく心の安らぎを感じた不思議なドラマが始まりました。


Twin Peaks Intro High Quality(1990年)

90年代初頭

実質的には90年が経済的なバブル崩壊でしたが、また復活するかもしれないと淡い期待に体感的波及の速度は遅く、90年代前半はバブルの頃の余韻を残していた時代で、ジュリアナ東京ブーム(つまり実際にはバブル経済崩壊後)の「ボディコン・イケイケ」路線が隆盛します。

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転機というより、私の場合はじわじわプロになっていったんです。
20代はずっと中途半端だったかもしれません。大きな刺激になったのは例えば、大学時代の『漫画サンデー』編集部のアルバイト。これは漫研の伝統のアルバイトだったんですが、原稿取りに行って、修羅場中の先生のお手伝いをしたり、先生とお話しできたりして、漫画家さんがずいぶん身近になりました。
当時はバブルで、私でも小さなカットの仕事がたくさんありました。発注は基本的に「会って」打ち合わせるので、しょっちゅう業界の方と「差し」で話すことになり、それもとてもよかったです。私は作品をコミック誌へ持ち込んでも、まぁ、ボツばかりで・・。アシスタント、似顔絵師、カットなどで日々つないでいました。
それでもバブルのおかげで少しずつプロになれたのです。強い意志というより、時代の流れが大きかったんでしょう。
あと、意志というより、人と触れあうことでビジョンが育ったとも言えます。昔から漫画家になりたかったわけじゃなくて、カオスの中でいろいろ揉まれているうち、結果的に今の仕事に落ち着いた感じです。

早稲田ウィークリー


1992年の東京の日常風景

実際にバブル崩壊の影響を体感し始めるのは、1993年以降。


ポケベルが鳴らなくて OP 国武万里 1993

メッセージを送り合うことが大流行したポケベル、そしてピッチ(PHS)の時代へ

1994年に「ジュリアナ東京」閉店。その後、バブル崩壊が深刻な社会問題となるのでした。

原作みかんの頃(1990年代後半)

作者がモデルとすれば、みかんが17歳のときは1979年ということになるのですが、新聞連載ということで彼女の80年代(もっと古いものも)のエピソードを元に、時代に合わせた設定に変化させています。

『耳をすませば』は1994年の夏から秋にかけて進行したことになっていて、『あたしンち』も1994年から連載開始。

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ただ、現実の「聖蹟桜ケ丘」付近はビルが増え過ぎてしまったことから、わざわざ「十年前の風景に戻した(つまり1984年頃)」と宮崎監督は語っています。

「原作みかん」の年齢から逆算すると原作での登場人物の生まれた年は、

月島  汐  1976年生まれ(公開当時18歳)『耳をすませば』雫の姉
立花 みかん 1977年生まれ(連載開始当時17歳)
さくらさきこ 1978年生まれ(ももこの年から逆算)

月島  雫  1980年生まれ(公開当時14歳)
立花ユズヒコ 1980年生まれ(連載開始14歳)早生まれ?
さくらももこ 1980年生まれ(みかんの年から逆算)

途中の設定の変更によるズレはありますが、大体こんな感じでしょうか。リアルみかんと15ほど年の差があります。

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作者は15歳年下の17歳の高校生の流行を知るために、こんなリサーチもやっていたのかもしれません。

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95年以降、女子高生の間に「ルーズソックス」が流行りだし、「アムラー」やガングロから発展したスタイルの「ヤマンバ」が話題となります。でもそれは時代のほんの表層。(本当の氷河期の訪れは90年代後半の頃。

この頃、80年代前半を引きずった日常系マンガやアニメが登場し、人気を得たのは自然の成り行きなのでしょうか。

そんな95年以降からの17年間、日本はデフレ経済に慣れ切って、ダイナミックな変化のないモヤモヤとした時代を過ごします。もうすぐ幕となる平成デザインが「平べったく特徴のない」のは仕方のないことかもしれません。

『あたしンち』ではこの全く違うふたつの時代の雰囲気が交差していて、頭の中のタイムラインが大混乱するのです。

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本日の一曲

しかし、1990年から26年の歳月を経た俳優たちの現在の姿を見ていると感慨深いものがあります。


TWIN PEAKS – THEN & NOW

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