25歳になった千尋_やっぱり神隠し

今年 8月、BBCが「21世紀の偉大な映画ベスト100」を発表しました。「21世紀」とはちょっと気が早いように思いますので、第一次速報版といったところでしょう。

やっぱり『千と千尋の神隠し』

21世紀の偉大な映画ベスト100

そのベスト10には、このブログでお薦めしたデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』、リチャード・リンクレイター監督『6才のボクが、大人になるまで。』、テレンス・マリック『ツリー・オブ・ライフ』が選ばれています。
 

1. Mulholland Drive (David Lynch, 2001)
2. In the Mood for Love (Wong Kar-wai, 2000)
3. There Will Be Blood (Paul Thomas Anderson, 2007)
4. Spirited Away (Hayao Miyazaki, 2001)『千と千尋の神隠し』
5. Boyhood (Richard Linklater, 2014)
6. Eternal Sunshine of the Spotless Mind (Michel Gondry, 2004)
7. The Tree of Life (Terrence Malick, 2011)
8. Yi Yi: A One and a Two (Edward Yang, 2000)
9. A Separation (Asghar Farhadi, 2011)
10. No Country for Old Men (Joel and Ethan Coen, 2007)

「21世紀の偉大な映画ベスト100」BBC

デヴィッド・リンチ監督、最強ですね。リンチファンとしてはうれしい限りです。


Mulholland Drive (2001)

そして、日本映画からは宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が第4位に。


Spirited Away – Official Trailer
 
BBCは2015年にも「アメリカの偉大な映画ベスト100」を発表していますが、2000年以降は6作品のみでした。いい映画はすでにハリウッドだけのものではないといったところでしょうか。
 

21. Mulholland Drive (David Lynch, 2001)
79. The Tree of Life (Terrence Malick, 2011)
94. 25th Hour (Spike Lee, 2002)
96. The Dark Knight (Christopher Nolan, 2008)
99. 12 Years a Slave (Steve McQueen, 2013)

「アメリカの偉大な映画ベスト100」BBC

スタジオジブリ総選挙

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そして 9月に入るとスタジオジブリが行なった投票企画『スタジオジブリ総選挙』の結果が発表されました。

1位に輝いたのは、やはり『千と千尋の神隠し』。

『千と千尋の神隠し』と『2001年宇宙の旅』

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BBCの「アメリカの偉大な映画ベスト100」では、『2001年宇宙の旅』は 4位となっています。

精緻な映像美

自分が『2001年宇宙の旅』を観たのが、14歳の頃。映し出される映像の精密さ、ストーリーの難解さ、最高の音楽効果に圧倒されました。それから33年後、偶然にも2001年に公開されたのが『千と千尋の神隠し』。

さすがに40代後半になって観た『千と千尋の神隠し』は、よくいわれる難解なシーンやストーリーの複雑さも、不思議なエピソードの集合体と思えばそれほどでなく、『2001年宇宙の旅』ほどの衝撃は受けませんでした。

それでも描き出されている背景画の圧倒的精密さ、久石 譲の叙情溢れるメロディーには久しぶりに魅了されました。

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それは日本に古来から伝わる伝統や過ぎ去った昭和という時代の残した遺構の美しさというものを見つめ直すきっかけにもなったのも確かです。

すでに消え去った普通の生活に存在していた身近なモノやコト。それを再び現すことでぼんやりと見えてくる、寄り添い暮らしていた懐かしい普通の人々の生活の痕跡。

『ラピュタ』以来の廃虚ブームの一端を担ったジブリ作品は、軍艦島はじめとした廃墟の世界文化遺産登録にも影響を与えたのかもしれません。

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類似点

実写とアニメ、モデリングとペインティングの違いはありますが、このふたつの作品にはどうも類似点があるような気がします。

  • 映像を優先したストーリー展開の意外な連続性。
  • 『テーマ』や『ストーリー』『プロット』を考えなくても断片的にも楽しめる映像。
  • 現実の物を想像力によって再構築した実感を伴う意外な形状の面白さ。
  • 映像のディテールへ異常なまでのこだわりによる情報量の多さ。
  • 人間の記憶のイメージのような印象深い静止画がゆっくりと動くように展開するシーン。
  • 映像イメージと俳優(声優)とのベストマッチング。
  • 音楽や効果音の的確な利用による映像への相乗効果。

なんて難しく書き並べてしまいましたが、つまり

  • 分かりやすい説明や難しい理屈の無い。
  • 興味深いエピソードが数多く用意されている。
  • 映像が丁寧に作り込まれていて見飽きない。
  • 作品の意味は観る人によってそれぞれ。

ということ。そしてこの手の映画が大好きな人々も大勢いるわけです。

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シナリオや撮影台本なしに映画作りをやってのける天才監督たちもいる。信じられない話だが D・W・グリフィスは『イントレランス』をすべて頭のなかにしまっていたという。スタンリーも『2001年』では、おなじことをやりたがっていたようだが、言いにくいことをいうと、ものの理屈からいってこれは不可能だった。また現実面でも無理だったのはたしかでーたとえば資本家たちに対しては、ある程度できあがった準備稿を見せなければならなかった。

ことははるかに複雑化した。終わり頃には小説とシナリオは同時進行となり、フードバックは相互におこなわれた。小説の初期の稿にもとづいてシナリオができ、それをもとに撮ったラッシュを見て、最終稿を手直しするといったようなことを各所でくりかえした。

失われた宇宙の旅2001 アーサー・C・クラーク

「世界観」とか「作品の意味」とか。

『もののけ姫』までは、パターン化された社会問題を内包したストーリーで展開され、思想的に分かり易かった作品が多かったのですが、それが『千と千尋の神隠し』からは希薄なものとなり断片的となりました。(もうひとつの好きな作品『紅の豚』も意味があってないようなものでしたが。)

キューブリック監督はカメラマン出身、宮崎駿監督はアニメのレイアウトマン出身ということで、始めにおおまかなアイデアやストーリーはあったかもしれませんが、結局どちらも、監督の頭のなかにある印象深い映像を描き出し、後からストーリーが追いかける感じになってしまった作品のような気がします。

「世界観」とか「作品の意味」とか、観客から妙に理屈を要求されるストーリー物の制作ではなく、自分が映像表現したいものを実現するため、出資者用にちょっとシナリオを用意。ただ監督にとってはそれは刺し身のつまぐらいなもの。

つまり、理屈はあって無いようなもの。観客は一見シンプルですがよく見ると実に微細なところまでこだわった未来やノスタルジーの風景を楽しみ、作品のエピソードの解釈は観る人のご自由にといったところ。

いい作品というのは、何度見ても飽きない映像美やインターネット上の借りものの知識や虚構体験ではなく、実際に生きて日々を過ごすうちに、ある日突然謎だったことが理解できたりする楽しみがあり、長く味わうことができます。

この本音が、このふたつを不滅のエンターテイメントたらしめているところ。

やはり『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』の間で、時代の流れがジブリを追い越したのかもしれません。

それ以降のジブリ作品は一度見ただけ。

ずっと『千と千尋の神隠し』クオリティの作品を待っていたのですが、監督自身の引退とジブリ解散という結末になってしまいました。

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本日の一曲

こちらは、千尋の乗った海原電鉄の外国版といったところでしょうか。


Ólafur Arnalds – Near Light

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