水木しげる作品と少年時代_もう少し

こうして振り返ってみて、1964年から1968年にかけての 5年間に水木作品から受けた好奇心の種は芽を出し、その後ずっと続いていることがよく分かりました。

まだまだ書き足らなかったことをもう少し。

みんないなくなってしまいました。

岡本綺堂  1872年~1939年
泉 鏡花  1873年~1939年
柳田国男  1875年~1962年
江戸川乱歩 1894年~1965年
水木しげる 1922年~2015年
松谷みよ子 1926年~2015年
辰巳ヨシヒロ 1935年~2015年
杉浦日向子 1958年~2005年

水木しげると戦争

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「それと水木は『戦争反対』とは決して言いません。 そのために、記事をうまくまとめられない記者さんも過去にはおられました」

水木しげる氏が正義の戦いなど肯定することは無かったと思いますけどね。 それでも守りたいものを護る為に戦うことを肯定し、そういう作品を残しています。

過去にはずいぶん、水木しげる先生に『戦争反対』と言わせたかった方がいたようです。

では何故『戦争反対』と言わなかったのか。戦争というものの本質をじっくりと考える必要があるようです。

マンガ 老荘の思想』(1987年)

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台湾の漫画家、蔡 志忠が老荘の思想をマンガ化によってわかりやすく再現、世界各国で翻訳され、好評を博したベストセラー。

実際に読んだのは、1991年ごろでしょうか。

他にも

『マンガ 孟子・大学・中庸の思想』
『マンガ孫子・韓非子の思想』
『マンガ 孔子の思想』
『マンガ 禅の思想』
『マンガ李白・杜甫の思想』
『マンガ 史記・列子の思想』

などがあります。

中国の春秋戦国時代は諸子百家の時代でもありました。

孔子、老子、荘子、墨子、孟子、荀子、それに四書五経「論語」「大学」「中庸」「孟子」、五経は「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」

水木作品に感じられたのは、「胡蝶の夢」あるいは「邯鄲の枕」で有名な老荘思想と言われるもの。いろいろな解説本があったのですが、このシリーズが入門書として分かりやすかったのです。

1994年『荘子』について、旺文社の高等学校向けの教科書に採用されたそうで、自分の時代にもあったらよかったのに。

『悪魔くん』(1966年)

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古神道

悪魔くんという洋風の世界で、なぜか悪魔が神事につながる注連縄(しめなわ)や御幣(ごへい)、榊(サカキ)を身に纏い、同時に結界という聖域が描かれていました。

これはなんとも不思議な表現だったのですが、日本のあらゆる物に神・精霊や魂などが宿ると考える自然崇拝である古神道の儀式についての興味を持つきっかけとなりました。

長く使われた物に、霊が宿った付喪神なども妖怪として水木作品にもよく登場します。

結 界

古来より郊外の集落の境や辻などに配置された道祖神、庚申塔、祠などの石仏は、災厄を集落に入れないようにするための、結界の役割をしていた。

Wikipedia

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千と千尋の神隠しの結界

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ツインピークスの結界

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近所の神社の結界

古神道や神道において、一定範囲の空間に設定されたタブー(禁足)を視覚化したものとも言え、それは聖なる領域(常世)と俗なる領域(現世)という二つの世「界」を「結」びつける役割をも持つ。

Wikipedia

地獄くん(1967年)

恨と諦念

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覚えている方は少ないと思いますが、少年マガジンの『悪魔くん』に対抗するように少年サンデーにムロタニ・ツネ象の『地獄くん』が連載されています。

スペア・タイヤの悲鳴/地獄の片道切符/悪魔火/一万円札の中/地獄の声/死神工場の巻

この『地獄くん』は『悪魔くん』と違い、藤子不二雄Ⓐの『黒イせぇるすまん』(1968年)と似たブラックユーモアを感じました。

作者のムロタニ・ツネ象は、野坂昭如や高畑勲、藤子不二雄Ⓐと同じく「焼け跡派」の世代の方で、太平洋戦争下の戦火の内地での記憶を持つ世代です。

このふたつを読み比べてみると、水木作品はネガティブ・グロテスクな内容を含んだ社会・人間批判というより、人間であるがために生ずる、より心にしみ入るような前向きな哀愁が感じられます。

河童の三平(1968年)

漫画版の『河童の三平』は1968年から1969年まで『週刊少年サンデー』『別冊少年サンデー』で連載されました。

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サンコミックス 河童の三平(1970年)

昭和のかっぱ

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黄桜ギャラリー

初めての河童との遭遇は、日本酒の「黄桜」の CM だったと思います。

昭和30年代は、かっぱえびせんや黄桜など清水崑画伯の「女かっぱ」が大活躍していました。ですから、もっとも身近で親しかった、ずいぶん色っぽい妖怪でした。

『河童の三平』はそのかっぱ一家の息子の物語のような気がしたものです。

芥川龍之介『河童』

けれどもお産をするとなると、父親は電話でもかけるやうに母親の生殖器に口をつけ、「お前はこの世界へ生れて来るかどうか、よく考へた上で返事をしろ。」と大きな声で尋ねるのです。

芥川龍之介『河童』

この一文で「自分はどこから来て、何処に行くのか」という問題のヒントを得た気がしたものです。自然に生きるも死ぬも自分で決められない人間の不自由さゆえに、古今東西いろんな宗教や哲学、思想が生まれてきたのだと。

柳田国男の『遠野物語』

間引きが頻繁に行われていた時代には、河童伝説がその正当化の口実となっていたことを想像するのは難しいことではありません。そして姨捨山も。

現在の昔話が、残酷なシーンを省略あるいは変更されている事も多く、本当はもっと残酷でリアルなもので、それがあたりまえだった時代もあったということを知ります。

過去の時代を考えるうえで、現在生きている時代の考え方だけで眺めていては、見落としてしまうことも多くありそうです。最近は、戦後教育の考え方をどうもヘンだなと感じる場面も増えてきています。

小島功さんも

74年に亡くなった清水崑さんの後を継いだ、漫画家の小島功さんも今年死去されています。

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『はぐれ雲』の連載で、購読を始めた『ビッグコミックオリジナル』に1974年から連載されていた『ヒゲとボイン』。これほど美しく色気のある女性を描ける漫画家はもう現れないかもしれません。

機械仕掛けの河童(2014年)

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兵庫県福崎町の西田原の辻川山公園のため池に出現する”河童”が人気を集めている。福崎町は民俗学者柳田国男の出身地。自叙伝に登場する河童の話をもとに同町が製作した。

神戸新聞


機械仕掛けの河童が人気

『日本の民話』松谷みよ子(1973年)

幼い頃、絵本といえばおとぎ話でした。もともと人一倍おとぎ話好きだったところに水木作品の不思議な世界。共通したものを感じて、民話を読みあさった時期がありました。

その頃手に入れたのが、この松谷みよ子の『日本の民話』シリーズ。

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動物の世界/自然の精霊/神々の物語/民衆の英雄/長者への夢/土着の信仰/妖怪と人間/乱世に生きる/太平の天下/残酷の悲劇/民衆の笑い話/現代の民話

自分の知らないずっと昔の物語。

そこには古きよき日本のゆったりとした時が流れていました。


まんが日本昔ばなしOP

松谷みよ子の『龍の子太郎』(1960年)は「まんが日本昔ばなし」(1975年)のオープニングでも有名。長野県の信州に伝わる民話を元に創作されたもの。

この『日本の民話』にも「まんが日本昔ばなし」の原作になったエピソードが多数載っています。

まんが日本昔ばなし~データベース~

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この信州の空を龍の子太郎は、母親の龍の背に乗って駆け巡ったのでしょう。

マンモスフラワー(1965年)

もともと「蓮」「睡蓮」には興味があって、よく撮影に出かけています。

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今年行ったある蓮園には大賀蓮(オオガハス)が咲いていました。

子供の頃に2000年以上前の古代のハスの実から発芽・開花した古代ハスがあることは聞かされていたのですが、実物を見るのは初めて。

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ところで、水木作品とウルトラQには太古の種子が発芽する『マンモスフラワー』というよく似た作品があります。どちらもこの古代のハスがアイデアの発端となっている様です。

それも、蓮は蓮でもオニバスを見てみると確かに古代の不気味な植物を想像することは難しくないよう気がします。

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有名なのは子供を乗せた写真で知られるアマゾンのオオオニバスですが、アジア原産で日本にも生息している「鬼蓮(オニバス)」というのもあり、名古屋城のお堀にも生息が確認されているそうです。

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名古屋城外堀で見つかったオニバスの果実

こちらも過去には富山県で直径267cmの葉が見つかっていて相当巨大なのですが、オオオニバスと違って葉の縁が立ち上がらず、花の形も違うようです。

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オニバスは白鳥の食害に遭っています。ということは、マンモスフラワーにも白鳥の群れが有効なのかもしれませんね。

美しすぎる「モネの睡蓮池」(2015年)

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岐阜県関市の山奥にある小さな池が「モネの絵に似ている」と人気を集めている。透明な水に睡蓮の花はたしかにそっくりで、錦鯉も泳ぐ。週末の1000人ほども見物に訪れるという。今ではずばり「モネの池」とよばれ始めた。

『終電車の女』(1970年)

八角堂

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幽霊が人間に恋をする『終電車の女』は1970年に 「週刊女性」に掲載された貸本時代の『花の流れ星』のリメイク。八角堂の塔の下で僧形の者が呪文を唱える場面が妙にいつまでも記憶に焼き付いています。

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長野県 安楽寺八角三重塔

以来、八角堂を見るとつい写真に収めてしまいます。

幸国寺納骨堂「瑠璃殿」(2006年)

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水木しげる作品と少年時代について、思い出してながら書き綴ってみると色々思い出されて、こんなに長くなってしまいました。

これでもまだまだ足らない気もしますが、この辺で切り上げることにします。

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