ジョブズ氏とアイヒラーホーム

1949年、ジョセフ・アイヒラー氏はユーソニアン・ハウスの思想をもっと多くの人々に届けるために、中産階級の家族のための建売業を始めました。

そしてそのアイヒラーホームのデザインは後にジョブズ氏に影響を与えることになります。

(その後の調査で、1959年からジョブズ一家が住んでいたマウンテンビューの家も「アイヒラーホーム」ではないことが分かりました。)
ジョブズ氏とアイヒラーホーム後日談

 


So Long, Frank Lloyd Wright

デザイン原体験

原体験というのでしょうか。自分の育った家がデザインの好みに大きな影響をあたえることもあるようです。


1956年頃の自分の家の室内写真。

奥の棚には建築雑誌が積まれていて、絵本代わりに眺めていました。最近父親に、当時このようなデザインの家具が販売されていたのか訊いたところ、すべて自分でデザインして近所の木工所で作ってもらったとのこと。しかしこのモダンさ、いつまでも記憶に焼き付いています。

そういえば当時は自分の住んでいた街にも、小さな木工所のほかガラス細工工場や竹細工のお店もあり、まえを通りかかるたびにその作業風景を何時間も飽きずに見ていた憶えがあります。いまはそんな工場もすっかりなくなってしまいました。

こんな環境で育った割には素晴らしいデザイン感性の持ち主に育ったわけではありませんが、少なくとも現在でもデザインの好みには影響しています。

ジョブズ氏の原体験

Steve Jobs grew up in an Eichler home and has stated “that his appreciation for Eichler homes instilled in him a passion for making nicely designed products for the mass market”

ロスアルトスで生まれ育った中流の男の子として兄は、ニュージャージーで生まれ育った中流の女の子と恋に落ちました。

モナ・シンプソンの追悼文より

伝記発表にあたり、ジョブズ氏はライターにこう語っています。「素晴らしいデザイン、それを大金をかけずに実現できるということ。そういうものが実に好きだ。これは Apple のヴィジョンの元だね。」

10月24日に発売された本人公認の伝記「スティーブ・ジョブズ」が10日で100万部を突破、村上春樹の「1Q84」を超えたそうです。総売上部数でどうなるのかは分かりませんが、ジョブズ氏がこんなに関心を持たれるとは古くからの Apple ファンとしては驚きで、Apple II はスティーブ・ウォズニアック氏、Macintosh はビル・アトキンソン氏、iPodも社内の若いエンジニアが試作していたのを目に留めたのが始まりで、そこに後からジョブズ氏が関わったのだと記憶しています。

ある経営者が「スティーブ・ジョブズは現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と語ったそうですが、その例えは的外れなような気がします。他人のアイデアだとしても、そのアイデアの持つ革新的な意義(アイデアを発想した本人も気づいていない)を見抜いて、それをシンプルに芸術的に表現したところがジョブズ氏の功績だと思います。

その発想に影響を与えたのがジョブズ氏が幼少の頃に住み親しんだ中流家庭向けの建て売り住宅「アイヒラーホーム」にあったというのです。

そしてそれはあの天才建築家フランク・ロイド・ライト氏まで遡ります。

ユーソニアン・ハウス(Usonian House)

ユーソニアン・ハウスは大恐慌から第二次世界大戦後の数年間、アメリカは安価で良質な住宅の供給を必要としていた時期に、フランク・ロイド・ライトによって考案された工業化住宅で。平屋建ての水平に延びる平面、開放的な厨房、カーポート、広々とした窓、パティオなどが有機的に連続するなど、それまでになかった新しいスタイルの住宅でした。


The Bazett House – Hillsborough

ジョセフ・アイヒラー氏とその家族は、1941年にカリフォルニア州ヒルズボロでフランク・ロイド・ライトのユーソニアン「Bazett House」を借り3年を過ごします。

1940年に建てられた「Bazett House」は、アクティブ・スペース(リビング、キッチン他)とクワイエット・スペース(寝室他)が90°の角をなして繋がっているL形プランの典型的なユーソニアンのなかでも「ハニカムハウス」と呼ばれる六角形グリッドバージョンでした。

また「ユーソニアン」とはこの新しく考案され住宅群を指しますが「米国市民」の意味でも使用されます。

アイヒラーホーム(Eichler Home)

アイヒラー氏はこのユーソニアン・ハウスの思想が気に入ったようで、もっと多くの人々に届けるために、中産階級の家族のための建売業を始めます。それから1949年から1974年の間に、カリフォルニア州に11,000棟、ニューヨーク州の3棟のモダンスタイルの家を建て成功しました。 熟練した建築家によって設計され、高品質な材料を使用した建物は50年以上経た現在でもまだ「モダン」に見えます。


Eichler: Modernism Rebuilds the American Dream

そのアイヒラーハウスの共通の特徴は、

柱と梁の構造
コンクリートスラブの基礎
付属のカーポート付きロングフロントファサード
入り口にあるオープンエアの中庭
床から天井までの窓
スライド式ガラスドア
床の放射熱 露出した天井の梁

しかしどことなく「和風」を感じてしまうのは自分だけでしょうか。


Enter the World of Eicheler Design

中産階級に生まれ育ったジョブズだからこそ

「すばらしいアイデアとデザインをみんなに届ける。」

このジョセフ・アイヒラー氏の社会的、芸術的な理想を受け継いだのでしょう。

現在の Apple Store NewYork


Ivy – Nothing But the Sky

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