漱石と電子ブックとニューエイジ音楽 03

ほとんど海外ドラマしか観ないのですが、見応えのある日本のドラマに久しぶりに満足しました。 …

坂の上の雲

『三四郎』は一青年の目を通して日露戦争後の日本社会を批評している作品ということですが、この幕末以降、日本近代化の一応の完了、その後の日本について批判的というスタンスは、司馬遼太郎と共通なものを感じます。

その司馬遼太郎原作のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」の第一部が2009年11月29日から始まりました。1回90分で制作され、2011年まで足掛け3年に渡って放送され、制作費も大河ドラマを上回るケタ違いの規模です。ほとんど海外ドラマしか観ないのですが、見応えのある日本のドラマに久しぶりに満足しました。

やはり素材がすばらしいことが大半でしょうが、日本にもまともにドラマを描ける力量の人材が残されていたのには少々安心しました。このレベルになるといわゆる「韓ドラ」とは一線を画します。今年の年末も楽しみです。

「坂の上の雲」は、司馬遼太郎が10年の歳月をかけ、明治という時代に立ち向かった青春群像を渾身の力で書き上げた壮大な物語です。
発行部数は2,000万部を超え、多くの日本人の心を動かした司馬遼太郎の代表作でもあります。今回、国民的文学ともいえるこの作品の映像化がNHKに許されたのを機に、近代国家の第一歩を記した明治という時代のエネルギーと苦悩をこれまでにないスケールのドラマとして描き、現代の日本人に勇気と示唆を与えるものとしたいと思います。
21世紀を迎えた今、世界はグローバル化の波に洗われながら国家や民族のあり方をめぐって混迷を深めています。その中で日本は、社会構造の変化や価値観の分裂に直面し進むべき道が見えない状況が続いているのではないでしょうか。
「坂の上の雲」は、国民ひとりひとりが少年のような希望をもって国の近代化に取り組み、そして存亡をかけて日露戦争を戦った「少年の国・明治」の物語です。そこには、今の日本と同じように新たな価値観の創造に苦悩・奮闘した明治という時代の精神が生き生きと描かれています。この作品に込められたメッセージは、日本がこれから向かうべき道を考える上で大きなヒントを与えてくれるに違いありません。
NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」企画意図

「日本がこれから向かってしまう道」は「坂の上の雲」以降にあるわけで、しかも大河ドラマでは『龍馬』。啓蒙したいNHKの企画意図は解りますが、過去は過去。「グローバリューション」「フラット化」という前代未聞の事態が進行しつつある状況では、外に向かってもその相手は見えないのです。

「千夜千冊」1359夜 トーマス・フリードマンフラット化する世界(上・下)

 

しかし、「坂の上の雲」を史実として捉えるかかどうかは別として、ドラマとしては大変楽しめます。

愚陀佛庵

たまたま『三四郎』を読みながら観ていたので、100年前の東京での生活様式をビジュアルに想像しながら読み進めることができました。生まれて記憶がある頃からコンクリート団地での空中生活で、日本家屋に寝起きしたことがない自分には、なかなかその日常の動きが実感できなかったのです。

さらに松山中学英語教師として赴任した夏目漱石が下宿した住居を再現した「愚陀佛庵」も当時の間取りから生活所作を想像するのに役に立ちました。

明治28(1895)年、松山中学英語教師として赴任した夏目漱石が下宿した住居を再現したもの。「愚陀仏(ぐだぶつ)」は漱石の俳号。日清戦争従軍後に大かっ血した正岡子規は療養後郷里の松山へ帰郷(これが最後となった)し、8月から10月まで漱石の下宿に52日間同居した。この間漱石らと松山市内をたびたび吟行し、多くの句を残した。戦災で焼失、1957(昭和32)年、松山城南ろくの萬翠荘近くに再建された。説明板に「桔梗活けてしばらく仮の書斎哉」(子規)「愚陀仏は主の名なり冬籠」(漱石)の句が掲げてある。
愚陀佛庵

2010年7月12日の記録的な豪雨で、松山城の城山において大規模土砂崩れが発生し「愚陀佛庵」が全壊しました。


愚陀佛庵物語

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